「君が手にするはずだった黄金について」を読んでみた

書評・レビュー・感想

「君が手にするはずだった黄金について」というキャッチーなタイトル

本書は作者の身の回りで起きたことを、作者の目というレンズを通して感じたことが書かれた短編集だ。
6つの短編から成っている。ちなみにタイトルの「君が手にするはずだった黄金について」というのは本書のなかで4つ目に収録されている短編のタイトルだ。
2024年の本屋大賞10位の本だった。

243ページ 220分で読了。
読むの遅いなぁ。全然早くならないんだが?

綺麗な表紙。
最後まで読んでも表紙の意味は全く分からなかった。

同じ事象でも、人によって考え方や感じ方は全く異なる

筆者の小川哲氏は「作家は、むしろなんの才能もない人間のために存在する職業だ」と言う。
「普通の人が気にせず進んでしまうものに固執してしまう愚かさが必要で、そういった摩擦がない人生に創作は必要ない」とも言っている。

この主張に対し、多くの人が声を大にして
「そんなはずはない。その『何かに固執してしまうという部分』が才能だ」と言うだろう。
僕もその多数の意見に同意だ。

だが、筆者が言っている意味も理解できる。

「固執しすぎてしまう」というのは自分ではその特性を疎ましく思っているのだろう。
『作家』という職業に対しても、各個人が持つレンズを通して見れば全く異なるということがよく分かる。

全ての短編について語っていてはキリがないので、
今回は本書のタイトル「君が手にするはずだった黄金について」という話に焦点を当てる。

黄金ってなんか良い響き。

君が手にするはずだった黄金について 感想

ざっくり要約すると、筆者の同級生だった片桐という男がポンジスキーム(投資詐欺の一種)で逮捕されるという話。

ポンジさんという人が考えた手法だそう。ポンジさん天才です。

要約するとバカが調子に乗って捕まっただけの話だが、
この片桐というバカに共感できる部分がある。

彼は人生に、他人に、そして社会に負け続けの人生だった。

エリートばかりの高校に通うが、自身は大学受検に失敗。
その後の就職活動にも失敗。
年齢は進んでいくのに理想の現実はどんどん遠ざかっていく。
身の程をわきまえず、上を目指し続けた人間。

そんな何もない人間が「黄金(本書においての黄金とは才能のこと)」を追い求めて詐欺をはたらく。
最終的に自滅すると分かっていながら。

世の中の嘘つきも大概は同じようなものだ。
絶対に敵わない誰かに対するコンプレックスがあるから虚勢を張る。
一瞬でもその憧れに近づきたくて、大きいことを言う。

その嘘つき本人は自己陶酔にふけっている。
しかし、嘘をつかれている周りの人たちはその嘘にうっすら気づいていたり、
そもそもその嘘つきの話を全く聞いていないパターンが大半だ。

なぜこの短編が僕の心に残ったかと言うと僕自身がコンプレックスの塊だからだ。

何の能力もない自分が嫌いだ。
常々なんとかしたいと思っている。

昔も、今でさえも、高学歴や筋骨隆々な男など、
圧倒的に敵わない現実を見せつけられてしまうと無条件でひれ伏してしまう。

だからと言って僕は自分より下の人を見つけて威張ったり、虚勢を張るようなことはしたくない。

幸いなことに、僕は努力すればギリギリ何かしら実る程度の素養がある人間だった。
だからそれらのコンプレックスを、嘘を吐いてまで払拭しようとは思わない。

しかし、僕になんの実力もなく、努力する才能もなくコンプレックスだけがあれば、
嘘を吐いて自分を大きく見せる側の人間になっていたかもしれない。

僕の嘘つきな友人の話

この短編を読んだ際、僕には思い当たる友人が一人いた。

その友人とは昔から同じグループで仲が良かった。
しかし、彼はここ最近、僕らのグループ内で煙たがられていた。
直接本人には言わないが、明らかに少しずつ。

理由はシンプルで彼の言うことが信用できないからだ。
仕事においてもそれ以外においても。

仕事で大儲けしているのかも知れないが、どんなビジネスモデルなのかも詳しく説明できない彼の仕事に加担したくない。
彼がなぜあんな風になってしまったのか考えると、あれもコンプレックスから来ているんじゃないだろうかと僕は思う。

僕らのグループはみんな昔から部活に入っており、今もちゃんとした会社で働いており、恋人もいる。
特段何かすごく難しいことをしているわけじゃない。

しかし彼は中学から部活に入らず、現在は謎のビジネスをしており、恐らくずっと恋人もいない。
「恐らく恋人がいない」というのはすごく失礼な決めつけだが、あの感じは間違いないと思う。

彼は「彼女は今まで普通にいるし、今もマッチングアプリで遊んでいる」的なことをよく言う。

しかし、僕らにはその彼女の写真を絶対に見せない。
「写真撮ってないからなぁ」と言うが、いい加減聞き飽きた。

「小学校が同じだった女の子と良い感じ」という僕らが確認できないコミュニティーの話も持ち出してきたりする。
逆に小学校時代の同級生相手には「中高の同級生の女の子と良い感じ」なんて言っていたりするのだろうか。彼の現状に対し、僕らは何一つ嫉妬心を抱いていない。

そんな彼を見ていて思うことがある。

彼はこれから先、幸せになることはないだろう。

幸せの定義は人それぞれだということは重々承知しているが
「豊かな人間関係は幸せに影響しない」という人は絶対に間違っている

昔からの友人に煙たがられ、これから先の人生を共にする恋人もいない。

今のこの状況を創り出したのは彼自身だ。

彼も今、彼なりの「黄金」を追っているのかもしれない。

でもこの先には地獄しか待っていないと思う。

僕と彼は本当に紙一重だったと思う。

現実を見て反骨心やコンプレックスを糧に努力してきた僕と、嘘をついて自分を大きく見せた彼。

同じ事象を見ても、どんなレンズを通して見るか。
僕はこれまで通り、正しいレンズを使ってこれからも物事を見極めたい。

最後に一つだけ言いたいのが、
この友人を僕はなんとかしたいと思っている。

彼は確かにどうしようもない人間だが、心の底からのクソ人間ではない。
昔、彼と一緒にいると楽しかった。
またそんな関係に戻りたい。

終わりに

1月に「今年はブログをずっと続ける!」と壮大な目標を立てながら一切更新できていなかった。
繰り返しの言い訳で本当に自分がイヤになるが、結婚式準備でほんとにほんとにほんとに忙しかった。

引き出物準備、全員分の手紙、オープニングとプロフィール動画の作成、船乗りの出席者の管理、余興準備、二次会準備などなど、ほんとに大変だった。
結婚式の反省点をまとめているので、それもブログにまとめようかと思う。

こちらは結婚式の前撮り写真@アメリカ
撮影中に至るところから「おめでとう」と言ってもらえてめっちゃ楽しかった!

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